経営コンサルタントの登竜門的資格として「中小企業診断士資格」がある。
中小企業診断士は、国家資格として位置付けられており、国が認める唯一の経営コンサルタント資格である。経済産業省の管轄となっている。
中小企業診断士を目指す人は年々増加の一途を辿っており、人気の資格であるといえよう。しかしながら、全ての受験者が中小企業診断士の取得を、経営コンサルタントとしての独立アイテムなどと考えているわけではない。
日本版MBAとも言われる中小企業診断士は、経営に関する広い知識を修得することが可能であり、スキルアップには最適。そういった勉強内容に魅力を感じて取得を志す受験生が多いようだ。平均年齢は資格試験の中でも比較的高くなっており、30代以降が中心となる。
この中小企業診断士は、経営コンサルタントとして独立するときには極めて役に立つ資格である。
経営コンサルタントを名乗ることは誰でもできるが、そのスキルの内容は基準となるものがない。つまり、その経営コンサルタントの実力をはかる尺度は不透明。
一方、中小企業診断士の資格を有していることが分かれば、最低限の経営コンサルタントとしての知識を有していることが明らかとなる。その意味で、中小企業診断士には信頼が付与されていると考えて良い。
しかし、だからといって将来が安泰と言うわけではもちろんない。
入り口としては活用度が高い資格であるが、足かせになる場合も存在する。
例えば、中小企業診断士を持っていると、公的機関での業務を請け負う場合、非常に有利になる。公的機関は国からお墨付きをもらった中小企業診断士であれば、業務を任せて安心というように考えているからだ。
ただし、公的機関から見れば中小企業診断士は、皆が同じように中小企業診断士である。つまり、どのような優れた実績を持つ中小企業診断士であっても、最近試験に合格して中小企業診断士になった人でも、同じように中小企業診断士として認識される。
公的機関では、謝金(報酬)は中小企業診断士の場合、一律的に決定されていることが多い。この場合、長いキャリアと豊富な実績があったとしても、新米の中小企業診断士と同様の謝金になることがほとんど。
そのためキャリアを積んだ経営コンサルタントは、中小企業診断士を肩書きからはずす傾向にある。キャリアや実績があれば公的機関から声が掛かるということが想定されるし、そのうえ中小企業診断士でなければ報酬は個別の交渉となる。このほうが、スキル的に優れている経営コンサルタントであれば有利に働くことは明らかである。
中小企業診断士資格をどう活用するのかについては経営コンサルタントによって異なるといえるが、最初に最大限の活用を図り(自分を徹底的に売る)、その後はできるだけ自らの経営コンサルタントとしてのスキルや実力で勝負するほうが良いだろう。
だからといって中小企業診断士が不要ということはない。やはり、入り口の段階では経営コンサルタントにとってこれほど威力のある資格はないといえる。