経営コンサルタントになるためには特に資格が必須というわけではないものの、有名なものに「中小企業診断士」という資格がある。
この資格は、経済産業省の管轄下にあるという意味で、いわゆる国家資格としての位置づけを持っている。故に、経営コンサルタントになるための登竜門である、といわれることも少なくない。
実際には、中小企業診断士=経営コンサルタントとは必ずしもいえないし、中小企業診断士ではなくても有名な経営コンサルタントはたくさん活躍している。そもそも、中小企業診断士資格で勉強する内容は、日本のMBAとも言われていることから、いわゆる経営に関する大学院に進んだという前提の内容になっている。
経営コンサルタントになるために中小企業診断士を勉強する人は実際には非常に多い。それは、MBAを想定しているという内容のため、経営コンサルタントとしての基本的かつ素養を学ぶことができるという意味があるといえる。
ところで、プロとして活躍している経営コンサルタントが中小企業診断士の資格試験に挑戦した時に、難易度はいったいどの程度のものなのか?
結論からいえば、すでに経営コンサルタントして活躍している人であっても、中小企業診断士の資格を無勉強で一発合格することができる、というのは事実上不可能であるといえる。
その理由は、最近の中小企業診断士試験の難易度が上がっているということももちろんあるが、その範囲の広さである。
一般的に、経営コンサルタントというのは、自分の得意分野をもって業務を行っている。たとえば、流通業専門だとか、学校系専門だとかの業種で専門化しているパターン。もう一つは、ITや販売促進、物流など、特定の専門領域に特化しているケース。いずれの場合でも、すべての知識を日々活用しているわけではない。
一方、中小企業診断士資格試験は、経営はもちろん、法律、経済、会計などさまざまな知識を学ばなければ突破することは難しい。
一次試験の科目数も多いし、最近では基本的知識に加えて応用的な知識も問われる傾向にある。プロとして活躍する経営コンサルタントであっても、それほど広範な知識をすべて押さえているというケースは多くはないだろうし、特に情報系などは毎年のように内容が更新されていくため、無勉強では不可能だろう。
また、試験では理論(セオリー)を問われるのが常識であるが、プロの経営コンサルタントは基本的に持論を持っている。これは、考え方によっては基本を知っているうえでの応用ということもいえるが、それは結果的にそうなるということであって、そのコンサルタントが必ずしも基本をしっかりと押さえているかどうかといえばまた別の話。この場合、応用は知っているが(持論はあるが)、基本的なことはよくわからないということも十分にあり得るのだ。
その意味で、やはり中小企業診断士試験というのは、基本的な内容を網羅的に押さえるという観点で非常に価値のある資格であるといえる。プロの経営コンサルタントの方が、一般の受験者よりも勉強するのは厄介なのではないだろうか。
最近は、すでに活躍している経営コンサルタントが中小企業診断士を泊付の意味や、再度の基本的な知識の確認という意味で受験するケースも多いというが、実際にはそれほど簡単に合格しているというわけではないようである。それも、理論と実践の知識の違いだったり、机上と現場の違いという面が大きい。
となれば、中小企業診断士の資格を考えているのであれば、経営コンサルタントになる前に一気にやってしまった方がよいといえる。勉強方法としては、広範な内容を一気にインプットする必要があるのだから、余計な知識が入っていない状態の方が合格しやすいといえるからだ。