経営コンサルタントが研修講師を行うと言うケースは良くある。研修と言うものは、一種の教育であるから、経営コンサルタントでなくても行うことは可能だ。
事実、研修会社の研修講師、すなわち専属の研修講師は経営コンサルタントとは限らない。研修会社で研修のノウハウを叩き込まれ、現場で訓練を重ねた研修講師が多い。こういった研修講師は、基本的に「マナー研修」など一般的に体系化あるいはカリキュラム化されている研修を受け持つことが多い。
一方、社員研修のオーダーと言うのはまさに多種多様で、実際には既存のプログラムの枠には収まりきれないことも多い。この場合、その会社内で起こっている問題を取り上げ、そしてそれを解決するための研修を行うことになる。
この場合、会社がどうなっているのか、現状分析を行いながら、それに最も適した研修プログラムを組み立てる必要があるため、経営的な知識が必要だ。このような研修では、現場を知っている経営コンサルタントの方が向いている場合が多い。
実際に、中小企業診断士を持ち、研修講師として活躍している経営コンサルタントは意外と多いのだ。
経営コンサルタントを目指す人に人気の中小企業診断士資格。経済産業省が認める唯一の経営コンサルタントの国家資格として毎年受験者は増加傾向。
一方、全ての受験者が独立や経営コンサルタントになろうと思っているわけではない。企業内でのスキルアップや自分の専門性を磨くため、経営に関する知識を習得したいという動機も多いようだ。中小企業診断士は、いわば日本のMBA的な勉強内容を意識していると言われ、大手の企業では中小企業診断士に合格することで、それなりに優遇されるようだ。特に、金融機関などでは将来の幹部候補として必須の資格となりつつある。
受験者の構成は、30代~40代が多くなっているが、最近では20代など低年齢化しつつある。学生も受験しており、女性の受験者も増加中。
中小企業診断士の女性はまだまだ貴重な存在であり、かつ、経営者の若返りが起こる中、女性の経営者が増えている。そういった現状を考えると、女性の中小企業診断士のニーズはかなり高い。女性の経営者は女性の経営コンサルタントに依頼する傾向も増えている。
経営コンサルタントは様々な業務を並行して進めていくことが要求される。1週間のスケジュールを見ても、クライアントへの支援であれば、1社と言うことはなく、数社への業務が混在し、さらに、講演や研修などの業務が入る。
もちろん、コンサルティングだけに特化している経営コンサルタントは講演や研修はほとんど入らないが、それでも頼まれれば嫌とも言えない。同様に、講演や研修を主要な業務としている経営コンサルタントにも、講演や研修を通してコンサルティングの依頼が入ることは少なくない。
特に、講演や研修を専門に行っている経営コンサルタントの場合、スケジュールは半年先まで埋まっているのが通常だ。中には、1年先までびっしりと言うコンサルタントも多い。
スケジュールは先に入ったものが「絶対」である。特に、講演や研修と言うのは、自分の都合でスケジュールを変更することはご法度。しかし、世の中上手くできているもので、スケジュールが埋まっているときほど、さらに仕事が舞い込む。しかも、先に入っている予定よりも良い案件(自分にとって都合の良い案件。例えば、謝金の金額が大きいなど)が入るものだ。このスパイラルに入ると、ひたすら忙しい日々に突入する。
逆に、暇なときはかなり暇になるもの。と言うよりも、暇になってしまうと、一向に仕事が入らなくなる。これを、負のスパイラルとするならば、意外とこういった状況に陥っている経営コンサルタントは多い。
一時期流行った、勝ち組と負け組みである。
コンサルタントの業務は多岐にわたるが、一般的にコンサルタントの業務を象徴するのが、コンサルティングである。コンサルティングの定義は様々あるが、結論から言えば「クライアント企業の業績を向上させること」である。
業績を向上させるために、問題解決や様々な手法は存在するが、結局行きつくところは「業績の拡大」である。人の問題も、お金の問題も、全ては業績を拡大するために解決が迫られていることだ。
クライアント企業が経営コンサルタントに依頼する、あるいは雇う理由も、最終的には「業績拡大」にある。
だとすれば、経営コンサルタントとしての実力が試されるのはまさに経営コンサルティングの場であり、研修や講演などは経営コンサルティングを行うための営業活動に過ぎない。(もちろん、講演によりやる気を引き出し、知識を提供することで参加者の業績向上に間接的に関与することはできる。しかし、経営コンサルティングは直接的に関与するという意味で、経営コンサルタントからすれば真剣勝負の場になる)
経営の専門家である経営コンサルタントの腕の見せ所が経営コンサルティングにあるのだが、これが実は多くの場合成果を出せないでいる。
理由はいろいろある。経営コンサルタントが誤った支援をしたという可能性もあるし、手遅れだったと言うこともあるだろう。
しかし、最大の理由は1つだけだ。
講演・セミナーと研修の違いを端的に言えば、参加者の意識の違いと、主催の目的の違いである。
講演・セミナーは、主催者は経営コンサルタントやその他の機関などで、その目的は経営コンサルタントであれば、「顧客を増やす」ことだろうし、その他の機関であれば、「参加者に有用な情報を持ち帰ってもらう」ことだろう。参加者はいずれも意欲が高く、評価もシビアである。経営コンサルタントとしては、講師の立場で非常にプレッシャーが掛かるのが、講演・セミナーであり、まともな講演やセミナーを行うことができるのは、1000名に1名だと言われる。一方、人気講師になれば収入的にはかなり安定する。
研修は、一般的に企業研修や社員研修と言われるように、企業が主催となって行われるものである。
経営コンサルタントは、企業に招聘される形で研修講師として研修を行うことになる。
講演やセミナーとの違いは、主催者である企業側が研修の目的を持っていること、及び、参加者の参加意欲が低いことである。
社員研修や企業研修を行う企業は、何からの意図を持ってその研修を行うのである。よって、社員研修を行う経営コンサルタントは、その企業の意図をしっかりと汲み取った上で、それを社員に対して「教える」というスタンスが必要だ。
つまり、講師というよりも、先生と言う位置づけが強くなる。